CDのご紹介

「梵語般若心経」解説文

現段階で、歴史的に最も古いサンスクリット語原典の般若心経がどこにあると思われますか?

サンスクリット語原典の般若心経は、複数残されています。最古のサンスクリット語般若心経は、なんと日本の法隆寺にあります。漢訳では玄奘三蔵法師訳の般若心経が有名ですが、他にもたくさん翻訳されています。本当の梵語(サンスクリット語)般若心経の原典はどれなのかは専門家でもわかっていません。

この度、リリースさせていただいたサンスクリット語の般若心経テキストは、他の般若心経原典と細かいところが少し異なります。重要な般若心経の核心部分には影響ありませんが、唱えてみると流れるような素晴らしいメロディに心がとても落ち着きました。とにかく理屈抜きで何度でも聴いてみたい唱えてみたいと思わせる旋律が重要だと考え、このテキストを選びました。

玄奘三蔵法師の漢訳般若心経の中に「度一切苦厄」(すべての苦しみから抜け出す)というくだりがありますが、この部分は原点にはありません。玄奘三蔵法師の創作です。少しでも般若心経を多くの方々に伝えたいという玄奘三蔵法師の思いが原典にない部分を挿入させたのではないでしょうか。私の梵語般若心経私訳は、玄奘三蔵法師訳には遠く及びませんが、原典の意味をできるだけわかりやすく伝えることに重点を置きました。そのため、原典に書いていない補足をたくさん入れました。ご容赦いただけたら嬉しく存じます。サンスクリット語原典からの訳は、「般若心経は深いインド思想を表現している」というサンスクリット語の大家アニル・ヴィディアランカール博士のお考えと、インド言語学への深いご見識と、その高弟の長谷川澄夫先生からサンスクリット語をご教授いただいたことによって訳すことができました。マントラを訳すことが難しいことは重々理解いたしております。諸兄の叱責を覚悟で訳しました。

サンスクリット語の「サンスクリット」とは、「最高に完成された」という意味です。文字はデーヴァナガリといい「神の都」という意味です。古代インド人にとってサンスクリット語は神の言葉であり、完成された宇宙の言葉だったのかもしれません。高度な文法は精密であり、深甚微妙な仏典を訳すのにサンスクリット語はうってつけだったと推察いたします。サンスクリット語の素晴らしい波動が、唱えたり聴いたりすると我々の身心を癒し瞑想の準備になったり、呼吸法になったりします。この度、サンスクリット語からの日本語私訳、漢訳、梵語と日中印の般若心経が1つのCDに収められ世に出ることはこの上ない喜びです。一人でもたくさんの方々に般若心経の原典に興味を持っていただき、その清妙な旋律に触れていただけましたら幸甚です。

参学寺では、毎年6月の雨安居(うあんご)に断食をしながらお堂に籠り、さまざまな仏様、菩薩様、明王様の真言や陀羅尼をサンスクリット語で奉納させていただいております。あわせて収録させていただきました。皆さまのよくご存じの仏さまの真言陀羅尼の原音に触れていただけます。原音の調べをお楽しみください。お釈迦さまは、「森」で瞑想して森羅万象は相依相関(支え合っている)していることに目覚められました。そしてディープ・エコロジカル・エンカウンター(深い生態系との出会い)を体解され、やがて「空」の思想に発展します。空の思想のエッセンスが説かれた梵語般若心経は、きっと世界が直面している環境問題や平和実現に寄与するものと確信しております。このCDがその一助となることを願っております。「梵語般若心経CD」制作にあたり、御支援御協力いただきましたすべてのご縁のある方々に心より感謝申し上げます。

参学寺住持 橋本法明拝

※「梵語」と「サンスクリット語」には、多用な解釈がありますが、ここでは梵語=サンスクリット語と定義させていただきます。